菊地先生のある一週間

2011.10.02(日)
また、始まるよー

ウケケ。作家の禁断の日々を暴露する1週間のコクハク。2011年分開始〜。

あ。明日からね。


2011.10.03(月)

朝11時少し前に起床。妻いる。インターネットでAmazonの翻訳もの順位をチェック。Dが何作かと「魔界都市<新宿>」「魔宮パビロン」の合本が。100位以内に入っている。ま、8日発売だからな。しかし、これでも売れたと言える順位には遠い。少し前、ある編集者から、
「30冊も翻訳が出るなんてスゴいですよ。江戸川乱歩なんか3冊きり」
しかし、VS.乱歩か。幾ら数が多くてもなあ。ま、気長に映画化を待つか。
食後、ソファーで横になってると、眠くなってくる。一寝入りと思ったら、妻がピアノの前に座る。何もかも夢であった。私はピアノというのは、センスよりも運動神経だと思っているが、妻のを聴いていると、確信が薄らぐ。
原稿書く。何とか10枚上げて送る。まだノリが悪い。
17時半から歯医者。1人可愛い助手がいる。病院なんてそれしか楽しみがないよ。タクシーで行く。ドライバーは女性。何か嬉しい。助手さんもいた。今日で一端、治療も終わり。フフフ。しかし、助手さんの手くらい握っておくべきであったかも知れない。だが、先生の彼女だったりしたら、マズいしな。あれこれ考えながら、帰りに成城の三省堂へ寄る。成果無し。
夜はおでん。
歯医者へ行く前に
「おい、夕飯はおでんがいいな」
と言ったら、
「おでんよ」
何の問題もない会話だが、なにか腹が立つ。


2011.10.04(火)

10時起床。妻どこかにいる。一昨日の晩騒いだせいか、昨日から首が異様に痛む。鞭打ちしたかな。とりあえず、近所のマッサージを予約。しかし、すぐ良くなるとも思えん。先生は男だしね。
昨日録画しておいた「中国神秘紀行/世界遺産 秘境・張家界」を観る。何百メートルもある岩柱が三千本もそびえる、映画「アバター」のモデルになった土地だという。高さ四百メートルの岸壁に走る通路。観ただけで足が震えて来る。高いとこはよそう。麓の街「鳳凰古城」の風情が抜群にいい。以前行ったことのある蘇州もそうだか、河の畔に建つ町は趣があっていい。名物の生姜飴も旨そう。暇が出来たら、行ってみよ。
13時。断水の時間だ。17時まで。ハヤブサは50億キロの宇宙旅行をしてきたが、地球ではトイレも使えない。人に万能的進歩は無理なのだ。
連載中の真田十勇士のゲラ来る。編集長氏から、TBSラジオから出演の依頼ありと付記。フムフム。なんだこりゃ? 弟の番組じゃねーか。ヤローいつの間に?面白い。メチャメチャにしてやろう、とオッケーを出す。急に気分良くなる。
関西の友人から久しぶりのメール。げ。本日入院。あちこち悪い男だったが。なんて他人事じゃない。こちらもガタがきております。
19時半。整体医院へ。昨日は地獄であった。鍼を打ち、揉み解し、なんとか動くようになったが、全快には遠い。いつものように、床にうつ伏せで執筆など夢物語じゃ。仕方なくテーブルで書いているが、全く集中出来ない。習慣の力は恐ろしいのだ。いい手はないか。
家に帰ったら、お笑い芸人がホールを埋め尽くしたお客の前で3年越しの恋人とやらに「結婚しよう」とプロポーズ。こういうのは二人だけの言葉ではないのかね? 恋人も芸人の母親もタレント仲間も目を潤ませている。アイノコトバもショーか。糞テレビ局めが。
少し戦闘気分のところへ、おやまあ、外谷さんから電話。ぶう、と出ようかと思ったら、大学時代世話になった先輩の訃報であった。出なくて良かった。しかし、今日はなんて日だ。


2011.10.05(水)

9時半起床。何故こんなに早いのかと言うと、良くなった首をまた寝違えたのである。いい歳をして
「イタイよお、イタイよお」
と家のなかをうろつくわけにもいかず、自然に治るのを待つしかない。一人で苦しむのもナンなので、友人に電話。起きぬけでむにゃむにゃしてるのを、強引に話題を作ってペースに乗せる。
「お宅の元妻、昨日見た」
「え?どっち?」
彼はバツ2である。参ったか?
パソコンや電子出版、ゲームや映画について話す。
「フムフム」
などと聞いているが、半分もわからない。彼はあらゆる最新メディアのトップを走っているのに対して、こちらは、
「いつでも死んでやる」
などと不貞腐れているからだ。
それでも彼の話は面白い。宇宙は何で出来ているかから、先日入院した関西の友人の病気まで、大いに勉強になった。
あ、雨だ。寒いと思った。ふと、外谷さんを思い出す。すぐ、横浜港沖を泳ぐ巨大な水棲動物、という週刊誌のキャッチが浮かぶ。なぜだろう?

それからだらだら。原稿進まず。原因を探ると、前回前々回のを読んでないせいだとわかる。やむを得ない。180枚分読み出す。うわ、ひでえ字。こら読めねえわ。少し反省する。しかし、きれいに書こうと思うのは別。
そこへ、昨日送ったゲラの再チェックと新作の絵組みの要請。わああ、パニックじゃパニックじゃと叫ぶが、誰も相手にしてくれないのでヤメる。地道に片付けようっと。


2011.10.06(木)

10時少し前に起床。猛烈に首が痛む。これは重傷に違いたい。死ぬまでヒイヒイ言ってる自分が頭に浮かぶ。今日は昼過ぎから深夜まで外出しなくてはならない。近頃キリスト教に凝って、
「主は誰でもつぶしたもう」
とか間違えている外谷さんに言わせると、
「主があんたに与えたもうた試練よ」
となるだろうが、試練など受ける覚えはない。これはいわれのない冤罪である。幸い今日は鍼の日だ。そちらに期待しよ。
鍼は17時から。その前に新宿で用事を片付ける。しかし、うまくいかんもんだ。鍼は都合145本。一本だけ響く。ぐえ、と悲鳴。先生機嫌悪そうだったから、ヤツ当たりを疑う。最近出た鍼に関する著書が紀伊國屋書店の新書の部売り上げ第一位になったんだからいいじゃねえの。しかし、昔は平気だったのに、この頃の鍼の効くこと。医院を出るともうふらふらである。歳は取りたくないなあ。
18時から某社の編集者と食事、と思ったら、
「わたし、実は作家を担当したことないんです」
「え」
「会社ではずうっと企画と営業担当でした」
「・・・」
「いけないことでしょうか?」
「いえ、別に。しかし、何故担当に?」
「おれよりお前が行った方が原稿を採れる、と父が。先生は女好きですよね。評判です」
「いや。まあね」
真正面から見つめられて、これを聞かれるのは初めてである。
以前も某A氏から、
「菊地さんを会合に呼ぶにはどうしたらいいか、と編集者に聞かれ、女呼ぶんだね、おんな、と言っときましたよ、はっはっはあ」
と言われた事がある。そんな、少ししか当たっていない情報流すから、ペテンがイカれるんだぞ〜。
食事は京プラの和食。旨いが薄味。なんとかイケた。原稿5枚渡す。しかし、まだ連載180枚丸残り。書き下ろし]本。どーなるんだろ?早く帰って寝よ。何も見たくない、何も聞きたくない。一人にしてくれ。何かカッコいいな。


2011.10.07(金)

6時半起床。妻いるけどグウグウ。昨日は鍼のせいで早目に寝てしまった。これから気を付けます。ぽこぽことお茶入れる。もきゅもきゅと飲む。家には電子ポットがない。節電に協力よ、だそうだ。なら蝋燭で暮らせ、アホ。トーデンなんかに協力するな。
テレビをつける。どのチャンネルも何とかショッピングと料理番組である。安くていい品を買う、安くて美味しい物を食べる。問題は全くない。しかし、これも何となく腹が立つ。理由はない。
ワイドショーを見る。私の愛するマツコ・デラックスはどこだ? 代わりに出ているのは、吉本ファンでなけりゃ名前もしらないお笑い芸人ばかり。知っててもああゆー美しくない顔はもう沢山である。テレビは絵ですぜ。きれいなものだけ映せとは言わんが、そうじゃないものを片端から持ってくるなって。あ。マツコはどうだって? 面白いのはいーのだ。外谷さんを思い出せ。
夜は近くのド〇ノピザから、シーフード30センチを取る。これが大失敗。ミルフィーユ状態の生地の間にチーズが詰まっていて、正直気味が悪い。歯応え、味ともにサイテー。好きな客がいるから作られるんだろうけどな。あのチーズ好きの妻が、一口目から悪態のつき放題。はったと残りをにらみつけ、
「明日はチーズを抜いて食べるわ。」
まだ、やるか!?


2011.10.08(土)

10時少し前に起床。妻いる。11時半に出ていく。友人に会うためだ。念のため。何となく手持ちブタさん。色んな部屋を覗いたり、洗濯機や冷蔵庫のドアを開けたり閉めたりする。
すぐ原稿にとりかかる気にならず、テレビをつける。歳のせいか、井上靖原作の「初秋」を録画。オヤジの不倫もの。多分。
ところがHDが一杯。仕事合間に観たい番組ばかりを残しておくからだ。なら、ディスクに落としたヤツを見るかというと、あんまり、ねえ。それほど長持ちする中身はないということだ。ディスク一枚ン万円となったら、録画するのは店頭で買えない映画かドキュメンタリーばかりになるだろう。
14時、原稿10枚書いてから友人と外食。華屋与兵衞。友人の名ではない。店の名だ。辛味ちゃんぽんうどんと小天丼のセット。なかなか旨い。親父が生きてたら、ケッと言うだろう。料理に関して誉めた事がない男であった。ま、親父のは確かに天才的に旨かったが。問題は人間にもこうで、その結果私も弟も離れて行ったのであった。
友人と吸血鬼についてあれこれ。アィディァを出しあう。他人の頭とゆーのは面白い。良くこんなアィディァが出るものだ。パクってはいかんと厳しく言い聞かせる。ま、自分に言っても困難が伴うだけどね。
17時過ぎ妻帰宅。毎度おなじみのマグマ大使でも見るような眼でこちらを見る。以前聞いたが、こちらも同じような眼つきで見ているらしい。自分に関しては納得できるわい。
原稿進まず。何とか5枚。近々神頼みだな。K門さんに相談しなくっちゃ。
トイレへ。戻る途中で鏡を見る。眉に白いものが。どう抜くか、鏡を見ながら考える。うーむうーむ。
少し開いてるドアの向こうを、妙な顔の妻が通る。
いつからそんな面白い顔になったのか聞いたら、
「10分近くも唸ってるから、何かと思ったら、鏡を見てるだけ。いい男ってわけじゃないし。トイレでバッかみたい」
この女は穏やかな晩年に興味がないらしい。余計なお世話だ、何よ、と少し喧嘩。原稿進まず。
深夜2時。破れかぶれ。画しておいた「初秋」を見る。
仕事ひとすじ59歳の役所広司が、旧友の娘27歳の中越典子と再開。彼は10代だった娘に恋心を抱いたことがあり、娘も彼を愛していた。これは悲恋でなくてはならない。そうでなくても、悲恋にしたら視聴者が首を括りかねない悲劇を用意しなくてはならない。これ上手く行ったら、アホ以外は怒るぞ。しかし、え? いいのか? そっち行っちゃって? 結婚?早まるな。まだ時間はある。どんでん返しは悲劇に向いているのだ。えーっ? こら、視聴者は辛くても悲しくても嬉しくても、納得のいく結末を望んでいるのだぞ。舐めんなよ。いや、もう舐められてしまった。あーあ。楽しい作り事であったことよ。役所よ、役所へ帰れ。寝よ寝よ。


2011.10.09(日)

正午過ぎ起床。前夜いなり寿司5個、7時頃ピザ一枚平らげてから寝たので、胃が重い。ついでに寒い。風邪ひいたかな。
りんせいさんから電話。屋形船「海底の墓場」ツアーについて、あれこれ話す。面白いアイディアあり。みんな喜ぶといーな。外谷さんか水中から現れ、船を揺らしたり、火を噴いて岸辺の建物を焼き払うということではない。ま、みんな喜ぶだろうが。
15時。先日の日記に書いた女性編集者から、捏造だ許さん、というメールあり。あなたと仕事が出来て幸せだ、と返信。誤魔化すなと返ってくる。今度お食事でも?話をそらすな、食事は頂く。平行線のまま切る。どこか誰かに似ている。妻来る。わかった。
15時半。DVDが切れてしまったので、近くのユニディへ買いにいく。家を出る前にイ〇〇エマ〇〇コ氏から、関西で入院中の友人についてメールあり。彼の容態について車の中で話し、店内で話し、帰りの車中で話し、家に帰ってからも話しで、とうとう妻が手話で怒りを表現し始める。なかなか上手い。それはともかく、イ〇〇エ氏もこちらも、違う話題で話が弾み、
「そろそろ結婚したらどうだ?」
「中々ねえ」
煮え切らない。知り合いの女性作家やイラストレーター、宅配のオネーさん、近所の床屋さんの娘、実家の未亡人まであげるが、喜ばない。好みがうるさい男だ。来世に期待しな。
ある会社がある雑誌を出すという未来に希望をつないで切る。
夕飯はヒレカツ。旨い。肉が。原稿進まず。
過日録画した「超ド級!世界のありえない映像ベスト」をダビング。おや、銀行ギャングを居合わせた客が捕まえた。理由はギャングの隣のカウンターにいたのが、客の女房であった。大笑い。
「バカな野郎だな。黙ってりゃギャングが女房始末してくれたかもしれんのによ。何もしないで自由が転がりこんで来たんだぜ。な?」
返事はない。
今日で日記はおしまい。また、ね。


2011.10.10(月)
おまけ

今日は塹壕戦も小競り合いもない、平和な1日であった。
では、ホントにまた、ね。
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