菊地先生のある一週間

2006.4.24

朝8時半起床。床の上。敷いてある座布団三枚がずれて、腰や肋骨が痛い。そのうち来るぞ。ある連載のこり15枚。何とか2時30分までにやらねば。取り敢えず5枚書く。何とかなりそうだーーと安心するのが悪い癖。さあ、進まない。竹島問題のTVを見るわ、世界の「軍用ピストル図鑑」をぺらぺらやるわ、メールをチェックするわ、「アラモ」のDVDを早送りしつつ楽しむわで、進まない。蝦、柚、優ってわかる? 今をときめく「キャンキャン」の三大モデル。TVでその「キャンキャン」の専属モデル審査会をやっていた。グランプリなし。流石に可愛い子が多いが、どうせ付き合ってくれないからどうでもいいや。「キャンキャン」とは雑誌らしく、編集長とやらが登場していた。髭もじゃの親父。こいつらが編集会議で『女の子にユメを与える雑誌を作ろう!』などと誓い合う姿を想像して、背筋が寒くなる。結局、原稿それきりで家出。あ、ただの外出である。用を済ませ、本屋で買い物。一万なんぼでこんなに時間つぶし出来るものが買えて、しかもためになるんだから、本は安い。帰ってAmazonの売り上げ順位チェック。家出前よりマシか。まだ発売されていない「死街譚」がVampireとGraphicNovelでランクイン。大分下だが、「夢なりし〜」もGraphicの100位以内に発見。売れ行きは思ったほどじゃないが、翻訳ものとしては上々だそうである。アニメのTV放映とかしてくれないかな。同じ日本産のSLAYERSやFULLMETAL ALCHEMISTも好成績。なんとかSAGAは200万番台。成績云々のレベルじゃねーや(笑)。27冊や2$54¢と同じか。疲れたのでひと寝入り。


2006.4.25

朝10時起床。床の上。座布団を蹴飛ばしてしまったせいで、ホントに床の上。いってって。柔軟をやったせいもあるだろう。へへへ、拳が前に付くんだぜ。晴天だったのに、TVを観ているうちに雷。近所のフランケンシュタイン博士がカーロフ君を生き返そうとしているらしい。TVでは福知山線の事故から一年特集。しかし、『殺された人々の思い』というテロップは『遺された〜』の間違いではないのか? 雷ひどし。博士、気が入ってるな。78才の女が12才年下の男に1200度の天ぷら油をぶっかけたとニュース。これも何かの実験か。『オペラ座の怪人』また見る。詰まらん。これは映画で見ないと絶対にいけない。最も有名なロンドン・キャスト版のCDでヒロイン役のサラ・ブライトマンの歌を聞く。映画のヒロイン=エイミー某も悪くないが、はっきり言って、月とスッボン。成る程、ブロードウェイがロンドン・キャストを呼ぶわけだ。ふむ、作家より作曲家の方が儲かりそうだぞ。若い歌手志望の子を見つけて、弟にしごかせてみるか。グー。母降りて来る。「元気かい?」「上に空飛ぶ円盤がきてるね」。意思の疎通無し。今日は実家へ帰る日。着いた。用事は深夜までに完了。あ、昨日から原稿進んでない。あと10枚、少し寝てからやるべ。


2006.4.26

朝5時頃から寝たり起きたり。なぜか眠れない。昼過ぎにFAXで残りの原稿送り、銀行へ行った後、友人宅訪問。この二人は同級生。ついでに僕も同級生。夫人が僕を見る視線にアツイモノヲカンジルーーこの妄想野郎が。昨日の夕飯から夜食、朝食に到まで全て弁当。面倒なくていいが、ゴミ処理が厄介。また列車の屑入れか。TAXIで犬吠埼の温泉ホテルへ。ここには露天風呂がある。もち混浴ではなく、隣も見えない。文句をつける奴はいないのか。いい気分で帰京。最終列車。鍼へ行く。二十日以上ご無沙汰していたので効く。先生のお弟子さんが可愛い。よく笑う。女性は、やはりこれさ。先生がいなかったら、もっと打ってと言いそうな自分がイヤ。帰宅してダウン。起きたら.11時過ぎ。また寝よ。


2006.4.27

朝11時30分くらいに起床。床の上。外はどんより。一雨くるかな。汗で頭がベタついてる。昨日、風呂へ入った筈だが、あれ、思い出せないや。アルツハイマーか。マ、よくあること。1時30分に新宿で、極秘打ち合わせ。まだ内緒。トーストにジャムつけて一枚。ジャムは苺ちゃんに限る。実は八ヶ岳の麓にジャム専門店があり、そこの桃ジャムやチェリー・ジャムが美味いのだが、手元にないので苺ちゃんが好き(ォォキモチガワルイ)。打ち合わせはとてもいい結論を迎えた。ケケケ。ルミネのレストラン街で食事。中華。そこそこだがしみじみしない。この頃は何でもこう。酢豚に芋をつけるな。TAXIで帰宅。ぱらつき出したせいもあるが、なんか疲れが取れない。昨日、外谷さんの漫画を描いたが、そのせいか。いつか呪怨がやってくる。見える人が、僕の背中を指差して怯えたら、得体の知れない何かだが、吹き出したらアイツだ。家でひと寝入り。起きたら6時半。TVや新聞で『堀江釈放か』とうるさいので、家人に堀江氏の素性を問うと『ホリエモンに決まってるじゃない、精神科で診て貰ったら』ーそういえば、そういう奴いたな。しかし、精神科云々はともかく、堀江某に対する反応は、みな僕と同じが正しいと思う。ソノラマの石井氏から電話。そろそろDの連載と書き下ろしのタイトルと現物をチョーダイ。なんと同時進行らしい。はい、すぐ送ります。よろしくと嬉しそうな返事。すぐに送るつもりだが、妙な気分。何度騙されても、結婚詐欺に引っ掛かる女性がいるよね。もう一件、皆も知ってるある人物から催促。二枚書いたよ。あーそーですか? で、昨日何やってたんです? これもすぐ送りますと言って、追究を逃れる。へっへっへ、甘いもンだぜ、このギョーカイ。『帰って来たドラキュラ』のDVDを見る。予備校時代に躍り上がって見に行き、大いに失望した凡作だ。見るたびに失望してきたせいか、今回は中々面白い。フレディ・フランシス監督、詰まらない人間ドラマを真面目に撮ったのが敗因か。と言うか、撮り方が下手。迫力ゼロ、スピード感ゼロ。無神論者の若者が面白いが、これはシナリオの功績だろう。唯一感心したのは、追ってくるドラキュラに、燃える石炭をぶっかけるところ。おお、スタンドインの髪の毛が燃えている。前作『凶人ドラキュラ』と本作でミソをつけたハマーのドラキュラ・シリーズは、次作『ドラキュラ血の味』で復活する。さて、内緒の仕事にかかるか。


2006.4.28

正午少し前に起床。あ、風呂に入ってない。頭少しゴワゴワ。昨日のムースのせいだな。整髪料は嫌いだが、色々あってやむを得ない。昨夜は内緒原稿12枚やった。あと38枚。内容からして、意外と進みがいい。わお、ビックリ。今日から体勢の立て直し。D二本も少しずつ、紅虫クンのお話もやらなきゃならないし、書き下ろしも待ってる。なによりも、ほら、『新・魔界行』が。そしてーーフフフなのである(ジツニイヤナカキカタダガ、チョロダシシタクテショウガナイノデアル。モットモ、ドクシャニハナニガナンダカワカランダロウ。ココガイヤラシイトコロダ)。
風呂に入ってから食事。ここで連休の予定を聞かされる。オヨヨ。休み無しか。仕様がない、仕事しよーーと思った眼の前に『秘伝/胴体力入門』があった。胴体力の創始者=故伊藤昇特集。僕の少林寺拳法の先生だ。処女作『身体革命』の解説は僕である。伊藤師範が編み出した三つの体操というのがある。ロフトのトーク・ショー、あの忘年会がかつては8時間ぶっ続けであった。流石にしんどく、合間に鍼を打ちながらやり抜いたのだが、ラスト一回は平気のへいざであった。三つの体操のおかげである。イーノ先生に話したら、早速著書を買い込み、効果があったのか、師範の別の本も購入したがってくれた。武道の他にも応用範囲が広い体操である。師範は逝くのが早過ぎた。
内緒の原稿の担当者より電話。なかなかいいじゃないですか。当然である。この担当は、僕をシンヨーしていない最右翼らしい。ふん。この調子でやって下さい。フーム、奥歯に物がはさまったような言い方だな。不満らしい。いつか泣き見せてやる。
原稿進まず。懐かしやハマーの『吸血鬼ドラキュラ』『ドラキュラ72』を見てしまう。『吸血鬼〜』については多言を要さないが、『〜72』も傑作であるな。巻頭のヘルシング教授とドラキュラ伯爵の追っ掛けからラストの対決まで、快調に飛ばしていく。なによりも現代が舞台なのに、古風な教会をメインに据え、ドラキュラのイメージを壊さないようにしているのが成功の元か。ある製作会社の人から頂戴した『SAW2』も見る。 才気溢れる快作だが、やはり無理などんでん返しと、余りにも悪い後味が難。おかげでもっと原稿が進まなくなったぞ。僕のせいじゃありません。


2006.4.29

10時起床。床の上。腰と肋骨の痛みが停まらないのは、このせいか。内緒原稿15枚電送。フフフ、驚いたか、担当め。朝食も摂らずに母の件で外出。ま、仕様があるまい。誰でもいつかこうなる。ならない方がいいけどね。帰りに近所のベトナム料理店へ。雑誌にもよく取り上げられる所で中々美味い。ベトナム風春巻よし、エビ団子よしよしよしの善子さんーーオェ。外谷さんの本名だ。凶ーーじゃねえ、今日いちにちヤバそう。
気がつくと、今日も頭ゴワゴワ。昨夜も風呂に入りそびれたのだ。外谷さんの呪いが稼動し始めたか。不安がオモクノシカカル。とりあえず入浴。日が高いうちの風呂は気分がいい。入浴剤入れちゃおうかな。あった。温泉の素。下呂温泉。やめる。AMAZONのVAMPIRESをチェック。79位に『妖殺行』。ま、新作がドコドコ出てくるからなーーと納得するのは、普段のキクチせんせー。他の外人作家みな殺し、と本気でかんがえるのが、ホントのキクチせんせー。ま、それはできっこないし、いっちょU.S.A向きの書き下ろしVAMPIRE小説でも叩きつけてやるか。ケビンさん、よろしくね。出版は『妖獣都市』の刊行を依頼しに来たあのでかいU.S.Aの出版社に頼もうか、等々いろいろ考える。
Dについて。どんな内容か、やっと決まる。書き下ろしはーふふふ、ラ〇ロ〇〇ス。連載は集団時代劇か。腰を据えてかかろう。細部まで煮詰めてからやるぞーーおお、気が入ってるなあ。自己陶酔。
昨日書いたいい話、良くない返事が返って来た。これだから向こうの映画屋はなあ。ひょっとすると危ないぞ。しかし、こちらも四年間は待つ気なし。他にも申し込みはあるのだ。最悪断ろう。間に入っている方が、もう一度話してみますと、言ってくれた。有り難くお受けする。       内緒の原稿進まず。担当者へのイヤガラセを考える。とりあえずやってみるか。実行しないと何も前進しない。こう思っていたら、向こうから電話。このヒロインの名前、古臭いけど、キクチさんの××××の××ですか?そーだよ。でも、今「〜子」って付ける親いませんよ。え〜っ、いつの間にか、そんな世界になっていたのかと、ビックリ。風呂入って寝よ。夜食は肉ウドン。


2006.4.30

正午少し前に起床。今日昨日とベッドの上。やはり楽である。そういえば、今日は日記の最終日か。名残り惜しいな。笹のエキスをお茶に混ぜて飲む。うむ、笹の味がする。胃腸が良くなるらしい。朝食の後、伊藤式体操。三分でも、硬い身体きはきついーーって、実はこれやり方を間違えているのだ。伊藤体操は決して余分な力をいれない。つい力んでしまった。イーノ先生に電話。四教室だの、外谷さんのヌード写メ(ォェ)、I氏の近況などについて話す。多分、今日は一日原稿書きだろう。
その原稿が進まない。理由は明らかだ。明らかでも手の打ちようがない。仕方なくvideoやDVDを見る。『ゴジラ』の初作。これも映画館で見た。家族が殺された子供を何処までも登場させて、核兵器の犠牲者の視点を維持させるやり方は、この作品だけか。ゴジラは正しく荒ぶる神。外国の怪獣が生物たることにこだわるのとは、大違いである。金の力で日本より遥かに優れた特撮技術を開発し、巨大怪獣映画を作ったとしても、この視点だけは真似できまい。かくてゴジラは世界の映画人の永遠の賞賛を受け続けるのである。痛快な怪獣映画はいくらもあるが、こんなに怖い怪獣映画は他にないだろう。闇を圧して迫るゴジラに「運命」の役割さえ与えた演出と伊福部昭のスコアの迫力よ。ちなみに、ゴジラのネーミングは、当時の東宝撮影所にいた容貌魁偉なスタッフのあだ名だったと言うが、今に到まで影も形も見せないのはどういう訳だ? 彼は本当に存在していたのだろうか? いないとすると、こんな伝説を作ったのは誰だ? そして、ゴジラのネーミングの意味は、やはり、ただのゴリラとクジラの合成なのか? 謎は深まるばかりである。
やはり原稿進まず。スピードとアクションは姿を消し、静けさがウリだからな。困った、言葉が出てこない。おれはヘミングウェイか。ウム、これで日記を閉じるのも面白いが、読者へのサ-ビス足りない。うーむ。そうだ、少し前にU.S.AのDHからある品が届いた。レア物である。次のロフトに持ってくぜ。短い一週間であった。今回は匿名、隠蔽に満ちて、皆さん歯痒かったでしょう。お詫びします。細かい話は次のロフトで。

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